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カテゴリー「Books」の142件の記事

2017年6月30日 (金)

『蜜蜂と遠雷』

ブックレビュー ☆4つ

『蜜蜂と遠雷』 恩田 陸

初 恩田 陸。
以前から気になっていた作家だが、今まで何故か手にとることがなかった。
今回は直木賞を受賞されたということもあり、図書館で予約。
500ページを超える大作に、遅読の僕は2週間で読み切れるか心配したが、無事読了。

国際ピアノコンクールに参加した若者たち(主に4人)の物語。
第1次予選から2次・3次そして本選まで、彼らの弾く楽曲を、音を、情景や風景そして感情や心情という言葉の表現に換えて伝える筆致は、クラッシック音楽には疎くて曲自体はまったく知らない僕にも、十分伝わってきたし感じることができた。

コンクールの最中にコンテスタント同士があれほど打ち解けられるのだろうかとは思ったが、同じ苦しみを味わってきたからこそ一瞬で心通じ合うものもあるのかもしれない。
そしてお互いに感じあうことで、さらに成長・進化していくさまは、回を重ねるごとに高まっていく観客の反応を通して、その場にいるかのように胸が弾む思いがした。

ラストで主人公の少年は想う。
「耳を澄ませば、こんなにも世界は音楽に満ちている。」
それは、作られた音楽のことではなく、自然界にあるさまざまな音。
そんな音を、音楽として感じ取れる感性・才能って素敵だなぁと思う。
 

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『蜜蜂と遠雷』 恩田 陸 著 幻冬舎

2017年6月21日 (水)

『騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編』

ブックレビュー ☆4つ

『騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編』 村上 春樹

ひと月近く前に読み終えていたのだが、何故かレビューが書く気になれなかった。

面白くなかったわけじゃない。
どなたかのレビューにあったように、、集大成というのはわかる気がする。
随所に既視感があるのだ。
このシーンって、『1Q84』に似たところあったよなとか、この感じ『ダンス・ダンス・ダンス』みたいとか、これ『国境の南 太陽の西』に・・・、とかいう感じ。
そういう意味では、村上 春樹ファンは楽しめるかも。

終わり方も悪くない。
でも何だろうなぁ、読み終えた満足感みたいなものがどうも希薄。
『騎士団長殺し』ロス、っていう感じでもないと思うし。

図書館で借りて読んだが、ブックオフで半値くらいになったら買って読み返してみようかな。
そうすれば、もう少し好きになれる気がする。
ただ、主人公がいろんな人と交わす会話部分は面白かった。
特に、免色さんと主人公がウィスキーを飲みながら語るシーンは好きだな。


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『騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編』 村上 春樹 著 新潮社

2017年6月 7日 (水)

『キトラ・ボックス』

ブックレビュー ☆4つ

『キトラ・ボックス』 池澤 夏樹

奈良県天川村の神社に伝わるご神体(剣と鏡)と、キトラ古墳との関連、そしてキトラ古墳の被葬者を探るミステリー。
といっても、読者には早い段階で真相が明かされるので、どちらかといえばサスペンスの色合いが濃く物語が進行する。

調査のため主人公と行動を共にすることになるウィグル出身の女性と、彼女を追う北京からの使者。

『アトミック・ボックス』とのタイトルの類似は読む前から感じていたが、主だったキャラクターが共通するので、シリーズものということになるのかな。
前作のエピソードも少なからず引用されているので、『アトミック・ボックス』を読んでからこちらを読んだほうが良いと思う。

スリル感は前作のほうがあったが、著者ならではの国際感覚と博識さで、物語として楽しめた。
が、エンディングの真面目さもいかにも池澤さんという感じ。
なにも村上 春樹さんほどとは言わなけれど、もう少し色事があっても良い気がするんだけどな。
 

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『キトラ・ボックス』 池澤 夏樹 著 角川書店

2017年4月30日 (日)

『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』

ブックレビュー ☆4つ

『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』 村上 春樹

村上さんの小説は、いつものことながら冒頭からしばらくは読みづらい。
面白くないから読むのを止めちゃおうかと思う気持ちを、「大丈夫、なんてったってこれは村上さんの小説なんだから、きっとそのうち面白くなるに違いない」 と心の中で励ましながら読み進める。
で、ふと気がつくとすっかり物語の世界・村上ワールドにハマっている。

主人公以外の人物が登場して、会話文が出てくると、読みやすく面白くなってくる。
独創的な比喩もいつも通り。
というか、近年の作品に出てきた比喩表現は、どうも凝りすぎてすんなりイメージできないことが多かった気がするが、この作品ではそんなふうには感じなかった。
主人公のユーモアのセンスも、僕が好きな初期のころの作品(『風の歌を聞け』から『ダンス・ダンス・ダンス』くらい)に似た印象をもった。

そういえば、本書を読んだ人の多くが行っただろうけど一応 ”免色(めんしき)” を検索してみた。
当然ながら、出版から2か月以上過ぎた今となっては出てくるのは 『騎士団長殺し』 絡みのものばかり、そりゃそうだよね。

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『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』 村上 春樹 著 新潮社

2017年4月 8日 (土)

『罪の声』

ブックレビュー ☆5つ

『罪の声』 塩田 武士

『グリコ・森永事件』をモデルにしたフィクション。

大企業を脅迫し、警察を愚弄し、世間を震撼させたうえに、誰一人捕まらず未解決のまま時効を迎えた 『ギンガ・萬堂事件』。

事件発生から31年が過ぎた頃、家で偶然見つけたカセットテープから、身内が事件に関与したのではと疑念を抱いた曽根 俊也。
年末企画の昭和・平成の未解決事件特集として、同事件を取材することになった若手新聞記者、阿久津英士。
ほぼ時を同じくしてこの事件を追うことになった二人は、それぞれのつてを頼り少しづつ犯人に近づいていく。
闇に隠れていた犯人像が徐々に現れていく過程は心弾むのだが、二人が交錯するあたりから重苦しさが漂い始める。
別々に犯人を追っていたはずの二人が、追うものと追われるものへと構図が変わる。
先の展開が気になってページを繰る手が早まるのとは裏腹に、犯人の家族や近しい人の不幸や心情を思うと、読み進めるのが辛くなる。

図らずも事件に巻き込まれた子供たちの悲運には胸が痛んだが、ラストにわずかながらも光明が見えたのが救いだった。

極力史実通りに再現したというストーリーは、『グリコ・森永事件』を丁寧になぞっているので、事件のことを知らない読者にも当時の様子がよく分かると思う。
あとがきの 「本当にこのような人生があったかもしれない、と思える物語を書きたかった」 という著者の思いが十分に伝わる読み応えのある作品だった。
 

「もう見飽きちゃったけど、しばらくここの景色を見ているわ。」

「人生の闇は大抵、日常の延長線上にある。」

「大人やったら、あんな心から嬉しそうな顔できひんし、全力で泣かれへんもん。」
 

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『罪の声』 塩田 武士 著 講談社

2017年3月28日 (火)

『東京會舘とわたし』(下)新館

ブックレビュー ☆5つ

『東京會舘とわたし』(下)新館 辻村 深月

昭和45年2月に休館し、新館として46年12月に営業を再開した東京會舘。

建物が変わっても、変わることのない従業員の対応、館内に残る旧館の記憶と、心に余韻を残す新たな装飾。

上巻は、そこに働く人にスポットを当てたエピソードが多かったが、下巻では訪れた人・利用者にスポットを当てたエピソードが主体となっている。

人は期待を超えた応対をされたとき、感謝から感動に変わる。
そんなどこかの営業研修で聞いたような行動を、さりげなくとれるスタッフたち。
その場でサービスを受けているお客目線になり、ついつい涙腺が緩んでしまった。

上下巻になっているが、章ごとに話が変わるので下巻だけでも十分に楽しめる。
僕は心温まる話が多い下巻の方が好きだな。

平成27年1月31日、東京會舘は二度目の建て替えのため休館となったらしい。
東京會舘のホームページを見ると、平成31年営業再開予定とある。
もう旧館や新館を見ることはできないが、おそらくは随所に宿るその記憶に触れに、ぜひ一度訪れたいと思う。

 
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『東京會舘とわたし』(下)新館 辻村 深月 著 毎日新聞出版

2017年3月14日 (火)

『サロメ』

ブックレビュー ☆4つ

『サロメ』 原田 マハ

オスカー・ワイルドの戯曲 『サロメ』 は、サロメが預言者の首を求めるくだり程度しか知らなかった。

オスカー・ワイルドの背徳と狂気の物語と、オーブリー・ビアズリーの邪悪で淫靡な挿絵。
原田 マハの 『サロメ』 は、二つの強烈な才能の融合の過程が、オーブリーの姉メイベルの目線で語られる。

史実に基づいているということだが、どこまでが事実でどこからが創作かわからない。
でも、僕は歴史を学びたいわけでもなければ、真実を知りたいわけでもない。
ただ物語を楽しみたい。
そんな欲求は十分に満たしてくれる。

オーブリーの絵のように蠱惑的で、サロメのように悪魔的なメイベルの振る舞い。
奸計をもって迎えるラストシーンは残酷だが、幻想的でもあった。

Photo
『サロメ』 原田 マハ 著 文藝春秋

2017年3月 8日 (水)

『東京會舘とわたし』(上)旧館

ブックレビュー ☆4つ

『東京會舘とわたし』(上)旧館 辻村 深月

大正十一年、東京丸の内に建てられた社交場・東京會舘。

新築まもない頃から昭和三十九年まで、戦争や震災も経験した建物と、迎える側だったり訪れる側だったり章ごとに異なる”わたし”との物語。

ルネッサンス様式の外観とロビー一面の大理石、格天井の宴会場。
豪華・壮麗な建物はそこで働く人たちの意識を高める。

ボーイ・レストランの支配人・バーテンダー・美容師・菓子職人、皆そこで働けることを誇りに思い、高いプロ意識で提供されるサービスは、訪れる客の満足感を高め、東京會舘の評価を上げる。

そんな相乗効果によって高まる価値、人々から愛された東京會舘の素晴らしさが伝わってくる。

物語は、下巻(新館)へつづく。

 
Photo
『東京會舘とわたし』(上)旧館 辻村 深月 著 毎日新聞出版

2017年2月 7日 (火)

『デトロイト美術館の奇跡』

ブックレビュー ☆3つ

『デトロイト美術館の奇跡』 原田 マハ

「アートは友だち、美術館は友だちの家」、作中の人物の言葉だが、このフレーズ他の作品でも見たような気がするんだけど、マハさん自身の気持ちなんだろう。

マハさん得意の美術館小説だが、実話をもとにしているためか、100ページ程度というボリュームのせいか、他の作品に比べると物足りなく感じた。
”奇跡”っていう言葉から、勝手にファンタスティックなものを期待していたら、ことのほかリアルな話だったからな。

ところで美術館といえば、つい先日愛知県美術館で 『ゴッホとゴーギャン展』 を観て、たまには美術館に足を運ぶのも良いなぁなどと思ったところだったのだが、僕が行くのは企画展ばかり。
身近な美術館の常設展で、お気に入りのアート作品に会いに足しげく通うという楽しみ方もあるのだと、改めて知った。


Photo
『デトロイト美術館の奇跡』 原田 マハ 著 新潮社

2017年1月30日 (月)

『裸の華』

ブックレビュー ☆4つ

『裸の華』 桜木 紫乃

社会人になりたての頃、同期の友人たちと何度かストリップ劇場へ行ったことがある。
あの頃は我が市にもそんな場所があったが、いつの間にか無くなってしまった。

脚の怪我で引退したストリッパーのノリカは遠く離れた札幌でダンスシアターを開業するが、そこで出会った天才肌のダンサーみのりに触発され、再起を決意する。

平成の舞姫の異名をもつストリッパー、ただ踊るためだけに生きているような若きダンサー、バックで流れる音楽と銀座の宝石と呼ばれたワケアリのバーテンダーが作る魅惑的なカクテル。
イマジネーションの目と耳と舌を楽しませてくれる小説だった。

いくつになっても、どこへいっても、身体一つで生きていくストリッパーの強さと逞しさ、そこでしか生きていけない痛々しさと哀しさ。
開いた脚の間よりも、伸ばした手の先に視線を向けさせるようなストリッパーの踊り。

何十年ぶりかでストリップを見たくなったが、今はもう愛知県に1軒も無いようだ。

Photo
『裸の華』 桜木 紫乃 著 集英社

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