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カテゴリー「Books」の139件の記事

2017年4月30日 (日)

『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』

ブックレビュー ☆4つ

『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』 村上 春樹

村上さんの小説は、いつものことながら冒頭からしばらくは読みづらい。
面白くないから読むのを止めちゃおうかと思う気持ちを、「大丈夫、なんてったってこれは村上さんの小説なんだから、きっとそのうち面白くなるに違いない」 と心の中で励ましながら読み進める。
で、ふと気がつくとすっかり物語の世界・村上ワールドにハマっている。

主人公以外の人物が登場して、会話文が出てくると、読みやすく面白くなってくる。
独創的な比喩もいつも通り。
というか、近年の作品に出てきた比喩表現は、どうも凝りすぎてすんなりイメージできないことが多かった気がするが、この作品ではそんなふうには感じなかった。
主人公のユーモアのセンスも、僕が好きな初期のころの作品(『風の歌を聞け』から『ダンス・ダンス・ダンス』くらい)に似た印象をもった。

そういえば、本書を読んだ人の多くが行っただろうけど一応 ”免色(めんしき)” を検索してみた。
当然ながら、出版から2か月以上過ぎた今となっては出てくるのは 『騎士団長殺し』 絡みのものばかり、そりゃそうだよね。

1
『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』 村上 春樹 著 新潮社

2017年4月 8日 (土)

『罪の声』

ブックレビュー ☆5つ

『罪の声』 塩田 武士

『グリコ・森永事件』をモデルにしたフィクション。

大企業を脅迫し、警察を愚弄し、世間を震撼させたうえに、誰一人捕まらず未解決のまま時効を迎えた 『ギンガ・萬堂事件』。

事件発生から31年が過ぎた頃、家で偶然見つけたカセットテープから、身内が事件に関与したのではと疑念を抱いた曽根 俊也。
年末企画の昭和・平成の未解決事件特集として、同事件を取材することになった若手新聞記者、阿久津英士。
ほぼ時を同じくしてこの事件を追うことになった二人は、それぞれのつてを頼り少しづつ犯人に近づいていく。
闇に隠れていた犯人像が徐々に現れていく過程は心弾むのだが、二人が交錯するあたりから重苦しさが漂い始める。
別々に犯人を追っていたはずの二人が、追うものと追われるものへと構図が変わる。
先の展開が気になってページを繰る手が早まるのとは裏腹に、犯人の家族や近しい人の不幸や心情を思うと、読み進めるのが辛くなる。

図らずも事件に巻き込まれた子供たちの悲運には胸が痛んだが、ラストにわずかながらも光明が見えたのが救いだった。

極力史実通りに再現したというストーリーは、『グリコ・森永事件』を丁寧になぞっているので、事件のことを知らない読者にも当時の様子がよく分かると思う。
あとがきの 「本当にこのような人生があったかもしれない、と思える物語を書きたかった」 という著者の思いが十分に伝わる読み応えのある作品だった。
 

「もう見飽きちゃったけど、しばらくここの景色を見ているわ。」

「人生の闇は大抵、日常の延長線上にある。」

「大人やったら、あんな心から嬉しそうな顔できひんし、全力で泣かれへんもん。」
 

Photo
『罪の声』 塩田 武士 著 講談社

2017年3月28日 (火)

『東京會舘とわたし』(下)新館

ブックレビュー ☆5つ

『東京會舘とわたし』(下)新館 辻村 深月

昭和45年2月に休館し、新館として46年12月に営業を再開した東京會舘。

建物が変わっても、変わることのない従業員の対応、館内に残る旧館の記憶と、心に余韻を残す新たな装飾。

上巻は、そこに働く人にスポットを当てたエピソードが多かったが、下巻では訪れた人・利用者にスポットを当てたエピソードが主体となっている。

人は期待を超えた応対をされたとき、感謝から感動に変わる。
そんなどこかの営業研修で聞いたような行動を、さりげなくとれるスタッフたち。
その場でサービスを受けているお客目線になり、ついつい涙腺が緩んでしまった。

上下巻になっているが、章ごとに話が変わるので下巻だけでも十分に楽しめる。
僕は心温まる話が多い下巻の方が好きだな。

平成27年1月31日、東京會舘は二度目の建て替えのため休館となったらしい。
東京會舘のホームページを見ると、平成31年営業再開予定とある。
もう旧館や新館を見ることはできないが、おそらくは随所に宿るその記憶に触れに、ぜひ一度訪れたいと思う。

 
Photo
『東京會舘とわたし』(下)新館 辻村 深月 著 毎日新聞出版

2017年3月14日 (火)

『サロメ』

ブックレビュー ☆4つ

『サロメ』 原田 マハ

オスカー・ワイルドの戯曲 『サロメ』 は、サロメが預言者の首を求めるくだり程度しか知らなかった。

オスカー・ワイルドの背徳と狂気の物語と、オーブリー・ビアズリーの邪悪で淫靡な挿絵。
原田 マハの 『サロメ』 は、二つの強烈な才能の融合の過程が、オーブリーの姉メイベルの目線で語られる。

史実に基づいているということだが、どこまでが事実でどこからが創作かわからない。
でも、僕は歴史を学びたいわけでもなければ、真実を知りたいわけでもない。
ただ物語を楽しみたい。
そんな欲求は十分に満たしてくれる。

オーブリーの絵のように蠱惑的で、サロメのように悪魔的なメイベルの振る舞い。
奸計をもって迎えるラストシーンは残酷だが、幻想的でもあった。

Photo
『サロメ』 原田 マハ 著 文藝春秋

2017年3月 8日 (水)

『東京會舘とわたし』(上)旧館

ブックレビュー ☆4つ

『東京會舘とわたし』(上)旧館 辻村 深月

大正十一年、東京丸の内に建てられた社交場・東京會舘。

新築まもない頃から昭和三十九年まで、戦争や震災も経験した建物と、迎える側だったり訪れる側だったり章ごとに異なる”わたし”との物語。

ルネッサンス様式の外観とロビー一面の大理石、格天井の宴会場。
豪華・壮麗な建物はそこで働く人たちの意識を高める。

ボーイ・レストランの支配人・バーテンダー・美容師・菓子職人、皆そこで働けることを誇りに思い、高いプロ意識で提供されるサービスは、訪れる客の満足感を高め、東京會舘の評価を上げる。

そんな相乗効果によって高まる価値、人々から愛された東京會舘の素晴らしさが伝わってくる。

物語は、下巻(新館)へつづく。

 
Photo
『東京會舘とわたし』(上)旧館 辻村 深月 著 毎日新聞出版

2017年2月 7日 (火)

『デトロイト美術館の奇跡』

ブックレビュー ☆3つ

『デトロイト美術館の奇跡』 原田 マハ

「アートは友だち、美術館は友だちの家」、作中の人物の言葉だが、このフレーズ他の作品でも見たような気がするんだけど、マハさん自身の気持ちなんだろう。

マハさん得意の美術館小説だが、実話をもとにしているためか、100ページ程度というボリュームのせいか、他の作品に比べると物足りなく感じた。
”奇跡”っていう言葉から、勝手にファンタスティックなものを期待していたら、ことのほかリアルな話だったからな。

ところで美術館といえば、つい先日愛知県美術館で 『ゴッホとゴーギャン展』 を観て、たまには美術館に足を運ぶのも良いなぁなどと思ったところだったのだが、僕が行くのは企画展ばかり。
身近な美術館の常設展で、お気に入りのアート作品に会いに足しげく通うという楽しみ方もあるのだと、改めて知った。


Photo
『デトロイト美術館の奇跡』 原田 マハ 著 新潮社

2017年1月30日 (月)

『裸の華』

ブックレビュー ☆4つ

『裸の華』 桜木 紫乃

社会人になりたての頃、同期の友人たちと何度かストリップ劇場へ行ったことがある。
あの頃は我が市にもそんな場所があったが、いつの間にか無くなってしまった。

脚の怪我で引退したストリッパーのノリカは遠く離れた札幌でダンスシアターを開業するが、そこで出会った天才肌のダンサーみのりに触発され、再起を決意する。

平成の舞姫の異名をもつストリッパー、ただ踊るためだけに生きているような若きダンサー、バックで流れる音楽と銀座の宝石と呼ばれたワケアリのバーテンダーが作る魅惑的なカクテル。
イマジネーションの目と耳と舌を楽しませてくれる小説だった。

いくつになっても、どこへいっても、身体一つで生きていくストリッパーの強さと逞しさ、そこでしか生きていけない痛々しさと哀しさ。
開いた脚の間よりも、伸ばした手の先に視線を向けさせるようなストリッパーの踊り。

何十年ぶりかでストリップを見たくなったが、今はもう愛知県に1軒も無いようだ。

Photo
『裸の華』 桜木 紫乃 著 集英社

2017年1月16日 (月)

『オムライス日和 BAR追分』

ブックレビュー ☆3つ

『オムライス日和 BAR追分』 伊吹 有喜

落ち込んだ時に食べるもの・・・考えたことないなぁ。
僕は落ち込んだ時にはお酒を飲んでさっさと寝て、朝起きた時には気分が変わってる。
お気楽っていやぁお気楽だけど。

オムライスって、ちょっと特別な気がする。
とりたてて高価なものではないが、カレーライスやラーメンのように普段食な感じはない。
玉子の黄色とケチャップの赤色、確かに元気になりそうだ。

今日はオムライス日和! そう思えば、落ち込んだ気分も上向きになれる・・・かな。

【即席オムライスの作り方】
・レトルトのミートソースをフライパンに入れて軽く火を通し、白飯を入れて炒める。
 仕上げに鍋肌から醤油をひとさじ。
・フライパンにオリーブオイルをひいてバターをひとかけ。
 バターがとけたら溶き卵を流し入れて塩・胡椒してスクランブルエッグをつくる。
・ケチャップライスにスクランブルエッグをかける。
 

Photo
『オムライス日和 BAR追分』 伊吹 有喜 著 ハルキ文庫

 
☆ 今日のラン
   TIME 01:10:24
   DIST. 11.3km
   6’13”/km
   904kcal 

2017年1月 6日 (金)

『マチネの終わりに』

ブックレビュー ☆5つ

『マチネの終わりに』 平野 啓一郎

初めて出会った時から惹かれあった、38歳の天才ギタリストの蒔野 聡史と、2つ年上の国際ジャーナリストの小峰 洋子。
一目惚れするような年齢でもないと思うのだが、交わされる会話のせいか安直な印象は受けない。
駆け引きのない(おそらく駆け引きしている暇はない)、かといって無分別にのめり込むほど浅はかでもない、大人の恋。

2007年から2012年にかけての話しで、その間にふたりが実際に会うのはわずか数回にすぎないのだが、「未来は過去を変えられる、変わってしまう。過去は、それくらい繊細で、感じやすいもの」 という冒頭に出てくる蒔野の言葉が、全編を通して効果的に引用されている。

ふたりの人物設定や、舞台が東京から、バグダッド、パリ、マドリード、台湾、長崎、ニューヨークと広範にわたるストーリーはけっして身近に感じられるものではないのだが、ふたりの周囲の存在やふるまい、また自爆テロ、亡命、リーマン・ショック、震災、被爆といった同時代の問題をもりこむことで、実感や共感あるいは反感を覚えながら物語に強く引き込まれていく。

どんなに大勢の中からでも相手を見つけられる、そんな陳腐とも思えるな恋の力さえ信じたくなってくる。
上質な、というか高級な大人の恋愛小説だと感じた。

難解な印象で敬遠していた作家さんだが、他の作品も読んでみたいと思う。
 

Photo
『マチネの終わりに』 平野 啓一郎 著 毎日新聞出版

2016年12月24日 (土)

『凍りついた香り』

ブックレビュー ☆5つ

『凍りついた香り』 小川 洋子

一緒に暮らし始めて1年の記念日にオリジナルの香水を涼子にプレゼントし、その翌日自殺した調香師の弘之。
弘之の死後、涼子が聞いていた生い立ちや、勤める工房に提出されていた履歴書は偽りだらけだったことがわかる。
”記憶の泉”と名付けられた香水と、工房のフロッピーに残された謎の言葉を頼りに、弘之の過去を尋ねる涼子は、しだいに真実に近づいていく。

最後まで弘之が自殺した理由は明かされないのだが、凍りついた香りは溶けたのだろうか。

数学の天才として理路整然と難問を解き、物事を整理することに異常な執着を示した弘之なのに、周囲に残した自らの経歴はあまりにあやふやだ。
そこなわれることのない記憶と、誰にも語られることのなかった真実。
”記憶の泉”を涼子に託すことで、自らの人生・過去を整理して欲しかったのではなかったか、と思えたりする。

訪れた人の言葉を取り込む孔雀の番人と語らう、幻想的な洞窟のシーンや、様々な事柄が繋がっている感じは、村上 春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』を思い起こされた。

これまで読んだ小川さんの中では一番好きな作品だ。
 

Photo
『凍りついた香り』 小川 洋子 著 幻冬舎

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