カテゴリー「Books」の179件の記事

2020年5月 4日 (月)

『ライオンのおやつ』

ブックレビュー ☆5つ

『ライオンのおやつ』 小川 糸  

ステージⅣ。
余命を告げられた海野 雫(33歳)は、残りの人生を瀬戸内に浮かぶ小島で過ごすことを決断する。
そして、これからはいい子を演じるのはやめよう、正直に生きようと。

ライオンの家という名のホスピスでは、毎朝違う味のお粥が出される。晩御飯には島で採れた柑橘類をふんだんに使った料理や瀬戸内の魚。
そして、毎週日曜日にはゲスト(入居者)のリクエストに応える、おやつの時間がある。
人生の最後に、もう一度食べたい思い出のおやつ。

痛みを緩和する様々な療法と、滋味あふれる食事で、身体も心も少しずつ死を迎える準備をしていく。
それまでの人生を悔いたり、運命を恨んだりしながらも、やがて穏やかに最後の時を迎えるゲストたち。

ライオンの家を運営する。マドンナの立ち居振る舞いが美しい。
「誰もが、自分の蒔いた種を育て、刈り取って、それを収穫します」

雫は考える。
どんな風に死を迎えるかは、どんな風に生きるかということだと。

平凡に毎日を送れるというのは、すごく幸せなことなのだな。
新型コロナウィルス感染拡大防止で、様々なことが制限されている今だから、よけいにそう思う。

とても美味しい小説だった。

「ごちそうさまでした」

そういえば、マドンナがホスピスに着いた雫に 「ライオンの家で、人生の醍醐味を、心ゆくまで味わってください」という言葉とともに用意していたのが蘇(そ)だった。
牛乳を2~3時間火にかけて混ぜ続ける、乳から得られる最上級のおいしいものだと。

長引く休校のあおりで牛乳の消費量が減っている今、家にいる時間がたくさんあって、牛乳を大量に使うということで、蘇を作る人が増えているんだとか。
今度の休みの日、作ってみようかと思ったが、3時間もコンロ使ってたら、邪魔だからどいてくれと言われるな。

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『ライオンのおやつ』 小川 糸  著 ポプラ社

2020年1月28日 (火)

『夢見る帝国図書館』

ブックレビュー ☆4つ

『夢見る帝国図書館』 中島 京子

図書館好きな僕としては、このタイトルを見て読みたくなって、すぐに図書館に予約を入れた。

作家のわたしは、上野公園のベンチで偶然知り合った喜和子さんという初老の女性から、図書館を主人公にした小説を書いてほしいと懇願されるところから物語が始まる。
図書館とは、明治に出来た日本で最初の帝国図書館のこと。

端切れをはぎ合わせて作ったコートと、頭陀袋めいたスカートという奇妙な装いで、くったくのないチャーミングな笑顔の喜和子さん。
馬鹿げているが、喜和子さんは図書館の妖精なんじゃないかという気がしていた。

主人公のわたしが書いたという設定なのだろう、作中ところどころで挿入される『夢見る帝国図書館』というタイトルの小説は、洋行帰りの福沢諭吉が日本にも図書館の必要性を唱えるところから始まる。
単なる図書館の歴史というより図書館の自伝のような、図書館を訪れた文士たちとの交友録のような物語。

そして、少しずつ明かされていく、喜和子さんの出生から戦後の生活、そして現在に至るまでの人生。

帝国図書館と幼い喜和子さんが出会うところで話しは終わる。

装丁が良い。
図書館に半分住んでいたようなものだと打ち明けた喜和子さんの言葉をイメージしたのか、書棚に並ぶ蔵書の一冊の背表紙が喜和子さんが住んでいた狭い路地の突き当りの古い木造家屋の玄関につながっている。

日々は「忙しい」という、感じの悪い呪文を唱えれば瞬く間に慌ただしく過ぎて行ってしまう。

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『夢見る帝国図書館』 中島 京子  著 文藝春秋

2020年1月25日 (土)

『祝祭と予感』

ブックレビュー ☆4つ

『祝祭と予感』 恩田 陸

『蜜蜂と遠雷』のスピンオフ短編集。

前作の、文章から湧き上がる音の世界感や圧倒的な筆致と分量からすると物足りなさを感じるが、”続編” ではないのでこれくらいさらっとした話でちょうど良いのかな。

登場人物たちの素の部分が伺い知れる、良い意味で力の抜けた作品集だと思う。

短編のタイトルと、概要・主な登場人物は以下の通り。

「祝祭と掃苔」 コンクールの後日談(風間塵、栄伝亜夜、マサル・カルロス)

「獅子と芍薬」 コンクール審査員2人の出会い(ナサニエル・シルヴァーバーグ、嵯峨三枝子)

「袈裟と鞦韆」 コンクール課題曲の裏話(作曲家:菱沼忠明)

「竪琴と葦笛」 子弟の出会い(マサル、ナサニエル)

「鈴蘭と階段」 コンクール後日談(浜崎奏、亜夜、塵)

「伝説と予感」 子弟の出会い(風間塵、ユージ・ホフマン)

二人の審査員がまだコンテスタントだったころの「獅子と芍薬」は亜夜やマサルや塵の現在の様子と重ね合わせてみたり、「伝説と予感」は謎が多い風間塵の一旦が垣間見れたりして、面白かった。

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『祝祭と予感』 恩田 陸 著 幻冬舎
 

プルの練習が覚えてないくらい久しぶりだったせいだと思うが、 先週のスイム後は3日目まで肩が筋肉痛だった。
何とか週1で泳いでいきたいと、今日はプールへ。
キックは1分30秒サークルで10本、ちょっときつい程度でこなせた。
先週3本しか続かなかったキック1分10秒サークルは7本。その後、1分20秒サークルで5本。

☆ 今日のスイム(ロイヤルスポーツクラブ)
   DIST. 2.4km
   (400m、キック 50m×10、ドルフィンキック 50m×2、プル 50m×12、2ビート左ブレス 100m×2、400m、200m)

2020年1月19日 (日)

『ツナグ 想い人の心得』

ブックレビュー ☆3つ

『ツナグ 想い人の心得』 辻村 深月

『ツナグ』の続編。

亡くなった人に会いたいと願う人の依頼を受け、死者と交渉し面会の場を設定する使者(ツナグ)の役目を祖母から引き継いだ歩美。

「使者が設ける面会は、死んだ者と生きた者、どちらにとっても一度きりの機会。一人の死者にたいして、会うことができる人間はただ一人だけ」

設定は前作と同じだが、面会の物語は前作のが心を動かされた。
ただ、今作は使者としての役割に加えて、歩美の私生活の部分が多く描かれている。
一生懸命仕事に打ち込むし、女性を好きになることもある。
歩美だって一人の若い男性なのだ。
その成長する姿を見るのは、微笑ましい。

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『ツナグ 想い人の心得』 辻村 深月 著 新潮社
 

自転車に乗って、岡崎市民駅伝に出る甥っ子の応援に行った。
高校3年生、年に2回くらいしか会わないし、ずいぶん背が伸びてたので、危うく見逃すところだった。
通り過ぎる直前に気付いて、あわてて後姿に向けて名前を叫んだ。
反応は無かったが、後で聞いたら、気づいてはもらえたようだった。

☆ 今日のポタリング
   TIME 00:52:27
   DIST. 10.4km
   Ave. 11.9km/h
   Max. 25.0km/h
   83kcal

☆ 今日のラン
   TIME 01:06:03
   DIST. 12.1km
   5’27”/km
   945kcal

2019年12月25日 (水)

『アンジェリーナ』

ブックレビュー ☆5つ

『アンジェリーナ』 小川 洋子

古書店で何気なく見た棚の、一冊の背表紙に目を惹かれた。
僕が知っているその名詞はひとつしかない。
そして、それはまさしく、その名詞だった。

”佐野元春と10の短編” とサブタイトルにあるとおり、作家 小川洋子が音楽家 佐野元春の楽曲から着想を得て書かれた短編集。

収録されている短編と副題、物語のモチーフは以下の通り。

・アンジェリーナ - 君が忘れた靴 -
 踊れなくなったバレリーナのトウシューズ

・バルセロナの夜 - 光が導く物語 -
 図書館で出会った男から託されたペーパーウェイト

・彼女はデリケート - ベジタリアンの口紅 -
 レンタルファミリーとして派遣される彼女と口紅

・誰かが君のドアを叩いている - 首にかけた指輪 -
 街中にひっそり建つ温室と失われてゆく体の記憶

・奇妙な日々  - 一番思い出したいこと -
 突然訪問してきた身勝手なおばさんが作る地図

・ナポレオンフィッシュと泳ぐ日 - 水のないプール -
 海辺のリゾートホテル・ナポレオンフィッシュのいない水族館

・また明日・・・ - 金のピアス -
 TVニュースのエンディングに流れる声

・クリスマスタイム・イン・ブルー - 聖なる夜に口笛吹いて -
 クリスマスに思い出す二つの風景

・ガラスのジェネレーション - プリティ・フラミンゴ -
 嘘をついて林間学校を休み彷徨った夜

・情けない週末 - コンサートが終わって -
 コンサートの帰り道に迷い込んだ寂れた公園

失ったもの、損なわれたもの、亡くなった人、思い出せないこと
忘れていた心の隙間に、そっと手を当ててくれるような物語。
 

ところで、何かの拍子に思い出して、読みたくなる文章がある。
それが短編小説だったりすると、どの本に収録されていたのか探し出すのに苦労するが、今回はすぐに分かった。

飛行機の中、クリスマスに会えない恋人にむけて書く手紙。
クリスマスに思い出す、つつましくも切ない二つの風景のこと。

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『アンジェリーナ』 小川 洋子 著 角川文庫

大切な人も 離れてゆく人も
メリー・メリー・クリスマス

2019年11月 4日 (月)

『学校では教えてくれない! 国語辞典の遊び方』

ブックレビュー ☆4つ

『学校では教えてくれない! 国語辞典の遊び方』 サンキュータツオ

お笑いコンビ「米粒写経」として活動している著者は、辞書を200冊コレクションする辞書オタクであり、学者でもあるらしい。

著者は言う
「ことばは、受け取る側にちゃんと届いてこそ、道具としての本懐を遂げます。・・・・・だから〈こういう場合には、こういうことばを使ったほがいい〉などのTPOを知るためにも、私は国語辞典の必要性というのを感じるのです。」

タイトルは、”遊び方” となっているが、国語辞典の選び方のガイドだ。

選び方、つまり国語辞典には出版社によって違いというか特徴がある、という前提の話から始まる。

第1章は、国語辞典自体の説明から、一般的にはどれも同じ(ようなもの)だと思われている国語辞典の出版各社による特徴や個性をその誕生の経緯や系譜も交えて説明している。

第2章では、各社の国語辞典に男性キャラクター設定して、その特徴をより詳しく解説している。

例えば、
『岩波国語辞典』は、都会派、インテリ眼鏡の委員長
とか
『新明解国語辞典』は、地方出身の野生派だけど、シャイな一面も
といったぐあい。

なんだか、わかったようなわからないような設定だが、実例を示して解説されるとなるほどなぁと思えてくる。

著者は用途によって使い分けるために、あるいは語釈を比較するために、辞書を2冊持つことを推奨しているが、特徴・特色が分かってくると、選ぶというよりいろいろ欲しくなってくる。

そんなわけで、僕の本棚の一角はこんな状態になってしまった。

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『学校では教えてくれない! 国語辞典の遊び方』 サンキュータツオ 著 角川学芸出版

☆ 今日のラン
   TIME 00:44:43
   DIST. 7.5km
   5’57”/km
   593kcal

2019年10月28日 (月)

辞書が好き

僕は国語辞典が好きだ。
実際、昔からわりと良く引いていた。

ただ、ここ十数年は辞書を引くことはほとんどなかった。
中学生の時から愛用していた辞書が、表紙が外れ全体が広がって使いづらかったのと、わからないことはネットで簡単に調べられるようになったから。

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中学に入ったとき伯母からもらった『三省堂国語辞典 第二版』

だけど、メディアで新明解国語辞典のユニークな語釈が紹介されているのを見たり、三浦しをん氏の『舟を編む』を読んだりしたこともあって、やっぱりちゃんとした(普通の状態のもの、という意味で)辞書を手元に置いておきたくなった。

どうせ買うなら使い慣れた三省堂かなぁとか、語釈が面白そうな新明解国語辞典が良いかも、などと思っていたところに、 ブックオフで新明解国語辞典 第五版が驚くほど安く売っていた(税込み 108円)のを見つけ即買い。
新語・現代語を調べる必要性を感じなければ古い辞書で何ら問題ないし。
それが5年前のこと。 

実際いろいろ引いてみると確かに個性的で面白い。
辞書を引く楽しさを再確認し、使う機会も増えた。

だけど、新明解は時に個性的すぎるので他の国語辞典もあった方が良いかな、と思い明鏡国語辞典と、硬派な印象の岩波国語辞典を買い足したのが半年前。
ラジオを聴いていたら某氏が国語辞典を複数持つことを推奨していたのと、まぁどちらもブックオフで古いものが安く売っていたから、ってことなんだけど。
いくら辞書好きだってマニアじゃあるまいし、新品を数千円だして買う気はないもんね。

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ただ、ここからはマニアに近い気もするが、新明解国語辞典 第五版というのはその独特の語釈・用例を主導していた山田 忠雄 氏が編集途中で亡くなった後に発行されたものだ。
それゆえ、山田氏の意向が強く反映されているとはいえ、そうでない部分もあるだろう。
実際、第五版以降は版を重ねるごとにその個性が薄れつつあるらしいし。
だとすれば、山田氏が編集のすべてにかかわった第四版も見てみたい。

それなら、もともとは同じ辞書の編纂に携わっていたが理念・方針の違いから山田氏と袂を分かつことになったという、見坊 豪紀 氏が主幹を務めた三省堂国語辞典も外せないじゃないか。
そもそも、辞書を引く楽しさを教えてくれた、僕にとっての国語辞典のルーツが三省堂国語辞典なんだし。

そこまでいったら、何故かしら僕の中では辞書と言えば”金田一” って先入観がある金田一先生が「今度の辞書ほど私の理想にぴったりしたものは作れなかった」(序文より)という学研 現代新国語辞典も揃えなきゃ。
って、これは近隣の教育委員会が卒業生に記念品として贈っているらしく、未使用と思われる最新の辞書が安く買えたからだけど。

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箔押しがあるためか、200円(割引クーポンを使って158円)で買えた学研 現代新国語辞典

ってことで、さらに3冊増えた。

さらに新明解類語辞典。
これはいろんな国語辞典を探している中で、こんな辞書があるんだって知ったのだが、ブックレビューやブログを書いているとイメージしている言葉がなかなか思いつかないときに便利かなと。

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そんなこんなで、この状態に。
うーん、これはもしかしたら国語辞典マニアかも。

試しに、それぞれの辞書で【マニア】を調べてみた。

新明解国語辞典 :趣味として何かを集めたり 何かをしてみたり することに熱中している人。
(第四版・第五版)

明鏡国語辞典 :ある一つの趣味に熱中し、それについての詳細な情報や資料をもっている人。

岩波国語辞典 :熱狂者。

学研現代新国語辞典 :趣味として、一つのことにひどく熱中している人。熱狂者。

三省堂国語辞典:熱狂(する人)

この言葉に関しては、新明解独特の思い入れのようなものは無かったな。
僕には明鏡が最もしっくりくる。
岩波は簡潔すぎないか、っていうか【熱狂者】でまた調べる必要性を感じる。ちなみに”【熱狂】血をわきたたせ、狂わんばかりに夢中になること” だって。狂わんばかりに・・・なるほどね。
三国(三省堂国語辞典)はさらに簡潔。ただ久しぶりに三国を手にして思ったのは、若い頃からずっと使っていたせいか手に馴染んで一番引きやすかった。

ちなみに、

新明解類語辞典では、【マニア】ある趣味に熱中している人。
そして、同じ属性として載っていたのは、物好き・好事家・馬鹿・虫・おたく・狂い・魔など。

やっぱり面白いね、類語辞典。ブックオフでも高かったけど買って良かった。 

この歳になって新たに何かを蒐集することになるとは思わなかったが、まぁ安い趣味ということで。

そしてその後、新明解故事ことわざ辞典も買ってしまった。(もちろんブックオフ)

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* 新明解国語辞典 第四版 108円

  明鏡国語辞典 360円

  岩波国語辞典 第五版  198円

  新明解国語辞典 第四版 1,311円

  三省堂国語辞典 第四版 200円

  学研現代新国語辞典 158円

  新明解類語辞典 2,460円

  新明解故事ことわざ辞典 1,300円

  新明解漢和辞典

2019年6月24日 (月)

『椿宿の辺りに』

ブックレビュー ☆4つ

『椿宿の辺りに』 梨木 香歩

この著者にしてはまともで(魂を持った人形が語りかけたり、幽霊やカッパが出てきたり、しないという意味で)、亡くなった人が枕元に立ったり、稲荷の言葉が聞こえたりするのを驚くべきこととして認識する人たちの話。

身体の生じた原因不明の痛みから、家系がかかえる問題へと発展していく。

終盤、宙幸彦と山幸彦の往復書簡(ここでようやくはっきりと『f植物園の巣穴」との関連が示される)に関してはどうにもわかりづらく、読みづらく、何だかわかったようなわかならいような、すっきりしない結末だった。

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『椿宿の辺りに』 梨木 香歩  著 朝日新聞出版

2019年6月21日 (金)

『東京の子』

ブックレビュー ☆4つ

『東京の子』 藤井 太洋

パルクールというスポーツを初めて知った。

 パルクールとは、フランスの軍事訓練から発展して生まれた、走る・跳ぶ・登るといった移動所作に重点を置く、スポーツもしくは動作鍛錬である。障害物があるコースを自分の身体能力だけで滑らかに素早く通り抜けるため、走る・跳ぶ・登るの基本に加えて、壁や地形を活かして飛び移る・飛び降りる・回転して受け身をとるといったダイナミックな動作も繰り返し行われる(ウィキペディアより)

オリンピックから3年後の東京。
施設跡地に出来た巨大な大学は、学生が働きながら学ぶという理想を掲げながら、労働力を企業へ調達ためのものだった。

東京が抱える問題、非正規雇用・外国人労働者。

搾取する側と搾取される側の間で、どちらの味方というわけではなく、求められた仕事(逃げ出した外国人労働者の捜索など)をパルクールの技術を駆使して こなす船津。

船津自身も過去に、児童虐待・育児放棄の過去で苦しんでいた。

失っていた自分を取り戻す船津。

様々な障害を軽やかに超えていく船津のように、社会に潜む多くの問題を切り抜けて、未来に希望を抱ける社会であってほしい。

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『東京の子』 藤井 太洋  著 角川書店

2019年6月11日 (火)

『みかんとひよどり』

ブックレビュー ☆3つ

『みかんとひよどり』 近藤 史恵

フレンチ・レストランのシェフが主役だが、ビストロ・パ・マルの三船シェフシリーズではない。

腕は良いが経営力に欠ける、ジビエ料理を得意とする雇われシェフの潮田と、不愛想で人との接触を嫌う猟師大高のからみが面白い。

ジビエ料理をこよなく愛するオーナーのもとで成長していく潮田だったが、野禽の調達・解体のシステムに加わることに対して、大高に「これ以上、人生を複雑にしたくない」と断られる。

放火や当て逃げ・盗難など、大高の周辺で事件は起こるが、ミステリー感はあまりない。

三船シェフシリーズで紹介される料理も魅力的だったが、本書の章ごとに紹介される料理は、イノシシの頭を使った料理など調理シーンはなかなかエグイものもあるが、そそられる。
みかんをたらふく食べた、みかんの香りがするひよどりの肉、なんて食べてみたいねぇ。

大作を二つ続けて読んだので、小休止として(と言ったら失礼だとは思うが)ちょうど良かった。

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『みかんとひよどり』 近藤 史恵 著 角川書店

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