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2019年5月27日 (月)

『カデナ』

ブックレビュー ☆4つ

『カデナ』 池澤 夏樹

ずっと読みたいと思いながらも、なかなか手を出せなかった『カデナ』。
本の厚さから、物語の難解さをイメージしていたからだと思う。

しかしこれを読むのなら、同じく沖縄を舞台とした『宝島』を読み終えた今しかない、と思い切って(というほどのことでもないけど)手に取った。

1968年夏、ベトナム戦争も終わりに近づいていた沖縄を舞台に、それぞれの立場でアメリカ軍に抵抗した3人の物語。
活動は、アメリカ空軍の北爆の情報をベトナムへ伝える、というもの。

カデナ基地内で働く、フィリピン系アメリカ人のフリーダ=ジェイン

サイパンで家族を失い、一人沖縄に戻った朝栄

沖縄で生まれ育った、地元ロックバンドのメンバーのタカ

フリーダは母国に住む母親の指示で。
朝栄は、サイパン時代の旧友でベトナム人の安南からの要請で。
タカは、バンド同士のトラブルから米軍基地へ逃げ込んだことをしった朝栄に頼まれ。

3人とも、決して強い信念があって始めたことではない。どちらかというと、なりゆきで、関わった。
物語は、章ごとに3人の目線で進行する。

さらに、タカは姉が関わっている米軍脱走兵を亡命させる活動にも加わる。

最もなりゆき感が強いタカが最も重要な役割を果たす一方で、二つのグループの指導者が、いざとなったら頼りなかったりするのは、軍隊と対照的で面白い。

『宝島』と共通する地名や事件が出てきたり(嘉手納基地・コザ暴動・沖縄本土返還など)、別人だが同じ名前の登場人物がいたり(チバナは知花だったんだ)したのも興味深かった。
やはり続けて読んだのは正解だった。

「殺す罪は盗む罪より重い」

安南「愛国心は感情としてどこか気恥ずかしいものだということです。・・・愛国心は例えば恋や友情に比べたら劣等な感情ですよ。どこかに無理がある。そのくせ生命が掛かっている。掛けられてしまう。嘘が混じっているのにそれは言ってはいけないことになっている。だから劣等なのです。」

フリーダ「男ってみんな子供っぽい。善良な男は子供っぽい。そうでないのは悪い奴。わかりやすいものだ。」

終戦後の後日談は必要だったのかな。
その内容も好みではなかったし、無い方が良かったと思う。

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『カデナ』 池澤 夏樹 著 新潮社

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