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2019年4月22日 (月)

『宝島』

ブックレビュー ☆5つ

『宝島』 真藤 順丈
第160回(平成30年 下半期) 直木賞 受賞
第9回 山田風太郎賞 受賞

戦後の米軍統治から日本へ返還されるまで(1952年から1972年)の沖縄。

戦果アギヤー(戦果をあげる者)と呼ばれる、米軍基地から物資を略奪する若者たちがいた。
奪ったものを、貧しい人や病人などへ配ったことで、島の英雄と言われていた ”オンちゃん” 。

これは、沖縄の歴史小説であると同時に、オンちゃんの影を追い続けた親友グスク・実弟のレイ・恋人のヤマコの青春群像小説でもある。

物語の冒頭、嘉手納基地に侵入した戦果アギヤーたちだったが、米軍に見つかり、ある者は病院へ、またある者は警察へ、そして霊安室へ。
グスクは命からがら脱出したものの、レイは刑務所へ。そして、オンちゃんだけが行方不明になった。

オンちゃんの消息を求めながら、グスク・レイ・ヤマコは警察官・やくざ者・教師として、それぞれの抱く信念と信じる正義で島のために戦った。
それは沖縄人(ウチナンチュ)の苦難の歴史でもあった。

そして、3人にその時々で関わることになる子供、ウタの成長小説としての側面もある。

米国人から抑圧され、日本人から見捨てられる沖縄。
沖縄の日本返還への期待と失望。
本質的な問題は、返還から50年近く経つ今もあまり変ってないみたいだ。

多用される琉球言葉(しまくとぅば)を推測するのも面白い。

悪い大人 ヤナムン 嫌な者
後継者 アトゥミ 跡目
説得上手 ムヌイー・ジョージ 物言い上手

「大切なのは、何も疑問を持たない状態におちいらんことさ」 P.64

「生きて前進することでしか輝かしい戦果は得られん。それを世界のどの民族よりも知っているのが、われら沖縄人ではないのかね」 P.118

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『宝島』 真藤 順丈 著 講談社

 

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