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2017年4月 8日 (土)

『罪の声』

ブックレビュー ☆5つ

『罪の声』 塩田 武士

『グリコ・森永事件』をモデルにしたフィクション。

大企業を脅迫し、警察を愚弄し、世間を震撼させたうえに、誰一人捕まらず未解決のまま時効を迎えた 『ギンガ・萬堂事件』。

事件発生から31年が過ぎた頃、家で偶然見つけたカセットテープから、身内が事件に関与したのではと疑念を抱いた曽根 俊也。
年末企画の昭和・平成の未解決事件特集として、同事件を取材することになった若手新聞記者、阿久津英士。
ほぼ時を同じくしてこの事件を追うことになった二人は、それぞれのつてを頼り少しづつ犯人に近づいていく。
闇に隠れていた犯人像が徐々に現れていく過程は心弾むのだが、二人が交錯するあたりから重苦しさが漂い始める。
別々に犯人を追っていたはずの二人が、追うものと追われるものへと構図が変わる。
先の展開が気になってページを繰る手が早まるのとは裏腹に、犯人の家族や近しい人の不幸や心情を思うと、読み進めるのが辛くなる。

図らずも事件に巻き込まれた子供たちの悲運には胸が痛んだが、ラストにわずかながらも光明が見えたのが救いだった。

極力史実通りに再現したというストーリーは、『グリコ・森永事件』を丁寧になぞっているので、事件のことを知らない読者にも当時の様子がよく分かると思う。
あとがきの 「本当にこのような人生があったかもしれない、と思える物語を書きたかった」 という著者の思いが十分に伝わる読み応えのある作品だった。
 

「もう見飽きちゃったけど、しばらくここの景色を見ているわ。」

「人生の闇は大抵、日常の延長線上にある。」

「大人やったら、あんな心から嬉しそうな顔できひんし、全力で泣かれへんもん。」
 

Photo
『罪の声』 塩田 武士 著 講談社

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